では日本代表が工夫した点を実際の試合映像から見てみよう。
ダブルタックル&リロード
まず「ダブルタックル」からだ。最初に南アフリカの攻撃を凌いでボールを奪い取ったこのシーンを見てごらん。
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南アフリカのセンター,キャプテンのジャン・デヴィリアスがクラッシュしてくるのを,サウと小野が二人で止めているシーンだ。
※上記動画から引用。
ジャン・デヴィリアスは身長190センチ,体重100キロ。圧倒的な突破力を誇る世界的名選手だ。
小野が下に低いタックルで入って,上半身にサウが入っているね。
そう。そしてここから日本代表はボールを奪い取っている。
次にこのシーンを見てごらん。相手のナンバーエイト,スカルク・バーガーをリーチがタックルで止めたシーンだ。
※動画から引用。
良いタックルだね。でも,結局ボールをパスされてるね。
そうだ。これでなぜダブルタックルをしなければいけないか少し分かったかな。
低いタックルだと相手の突進を止めるのには有利だけど,上半身は自由だから,パスをつながれてしまうということかな。
そうだ。体格で有利であれば,上半身にタックルしてボールごと抱え込み,パスをさせないようにできる。
しかし,日本代表は体格で負けているから,上半身にタックルしても吹っ飛ばされるだけだ。
だから,相手を止めるには相手の足に低く入るタックルが必要になる。
しかし,相手は下半身にタックルされても,上半身が自由な状態だから,そのままパスをつなごうとする。
タックルされながらパスをするのをオフロードパスという。
そのままひょいひょいオフロードパスでつながれ続けたらあっという間にトライされちゃうね。
そうだ。相手の突進を止め,かつ,オフロードパスを防ぐためにダブルタックルが必要になる。
また,相手の上半身をボールごと抱えることで,ボールを奪い取ることにもつながる。
それって,相手は一人で突っ込んでくるのに,こちらは常に2人いなきゃいけないってことだよね。
単純に考えて,防御の人数足りなくならない?
そのとおりだ。だから,タックルした人はすぐに立ち上がって次の攻撃に備えなければならない。
このように,グラウンドに倒れた選手がすぐに起き上がって次に備えることをリロードと呼んでいる。
なお,リロードは防御の時だけではなくて,攻撃の時も必要になる。
素早いリロードを繰り返し続けないと,ダブルタックルはできないということだね。
それって,超疲れるじゃん。
そうだ。このダブルタックル&リロードを繰り返すには,驚異的な体力が必要となる。
だから,日本代表は「世界一」と言われる量の練習を重ねてきた。
1日4部練習は当たり前。直前合宿は120日間にも及んだ。
凄いね。よく耐えられたね。
うん。いろんなものを犠牲にして耐えたんだ。南アフリカに勝つために。
日本代表のディフェンスの凄さが分かるのが,前半終了直前のこのシーンだ。
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凄いな。みんなタックルした後すぐに立ち上がって次に備えてるね。
うん。そして最後はトンプソンのタックルをきっかけにボールを奪い取っている。
ちなみに, 日本代表は総合格闘家の高坂剛選手に指導を受けて,タックルの技術も磨いてきた。
それがこのシーンに凝縮されてるね。何だか感動するな。
そうだね。低いタックルは相手の膝が頭に当たって脳震盪を起こす可能性もあるから非常に怖い。
大変な勇気が必要ということだな。だから感動するんだね。
そうだね。選手たちの「勇気」が見どころになるのがラグビーの特徴と言えるね。
では次にセットプレーについて説明しよう。
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