1.平均体重世界最重量。世界最強のフォワードを誇る南アフリカ
下記の表を見てごらん。これはワールドカップ出場国のフォワード登録選手の国別平均体重を重い順に並べたものだ。
国 | 平均身長 | 平均体重 | |
1 | 南アフリカ | 190.8 | 114.9 |
2 | ウェールズ | 191.4 | 114.6 |
3 | オーストラリア | 190.9 | 114.4 |
4 | イングランド | 189.3 | 114.3 |
5 | スコットランド | 190.1 | 114.1 |
6 | ニュージーランド | 189.8 | 112.9 |
7 | フランス | 189.4 | 112.9 |
8 | アイルランド | 189.5 | 112.7 |
9 | ルーマニア | 188.8 | 112.5 |
10 | ジョージア | 188.3 | 112.2 |
11 | アメリカ | 189.7 | 112.1 |
12 | サモア | 186.3 | 111.7 |
13 | フィジー | 187.2 | 111.4 |
14 | トンガ | 189.4 | 111.2 |
15 | アルゼンチン | 190.5 | 110.7 |
16 | イタリア | 189.4 | 110.4 |
17 | 日本 | 186.9 | 110.1 |
18 | ナミビア | 186.2 | 110.0 |
19 | カナダ | 187.1 | 109.1 |
20 | ウルグアイ | 184.1 | 103.8 |
フォワードはボールの争奪戦をするポジションだから,体重が必要とされる。
そうすると,平均体重はその国のフォワードの強さを測るひとつの目安になる。
南アフリカが一番重いんだね。
そうだ。南アフリカの特徴はその圧倒的なパワーだが,体重の重さにもそれが現れている。
もちろん,体重が重いだけじゃない。幼いころから高いレベルでプレーして来た彼らは,技術・判断力も世界最高レベルだ。
だから,南アフリカのフォワードは世界最強と言われている。
世界最強のフォワードのパワーで,世界最高のスピードを誇るニュージーランドに対抗してきたんだ。
2.南アフリカ代表フォワードと日本代表フォワードは高2と中3ぐらいの体重差
下の表を見てごらん。これは,南アフリカ代表と日本代表のスターティングメンバーの身長・体重をポジション順に並べたものだ。
南アフリカ | 身長 | 体重 | 日本 | 身長 | 体重 | 身長差 | 体重差 | |
1 | テンダイ・ムタワリラ | 183 | 116 | 三上正貴 | 178.0 | 115 | 5.0 | 1.0 |
2 | ビスマルク・デュプレッシー | 190 | 115 | 堀江翔太 | 180.0 | 105 | 10.0 | 10.0 |
3 | ヤニー・デュプレシー | 187 | 123 | 畠山健介 | 178.0 | 115 | 9.0 | 8.0 |
4 | ルードベイク・デヤーヘル | 205 | 125 | トンプソン ルーク | 196.0 | 108 | 9.0 | 17.0 |
5 | ビクター・マットフィールド | 201 | 110 | 大野均 | 192.0 | 106 | 9.0 | 4.0 |
6 | フランソワ・ロウ | 190 | 114 | リーチ マイケル | 190.0 | 105 | 0.0 | 9.0 |
7 | ピーターステフ・デュトイ | 200 | 115 | マイケル・ブロードハースト | 196.0 | 111 | 4.0 | 4.0 |
8 | スカルク・バーガー | 193 | 110 | ツイ ヘンドリック | 189.0 | 107 | 4.0 | 3.0 |
FW平均 | 193.6 | 116.0 | FW平均 | 187.4 | 109.0 | 6.3 | 7.0 | |
FW総体重 | 928.0 | FW総体重 | 872.0 | 56.0 | ||||
9 | ルアン・ピナール | 186 | 92 | 田中史朗 | 166.0 | 71 | 20.0 | 21.0 |
10 | パット・ランビー | 177 | 89 | 小野晃征 | 171.0 | 83 | 6.0 | 6.0 |
11 | ルワジ・ムボボ | 181 | 93 | 松島幸太郎 | 175.0 | 88 | 6.0 | 5.0 |
12 | ジャン・デビリアス | 190 | 100 | 立川理道 | 181.0 | 94 | 9.0 | 6.0 |
13 | ジェシー・クリエル | 186 | 96 | マレ・サウ | 183.0 | 97 | 3.0 | (1.0) |
14 | ブライアン・ハバナ | 179 | 94 | 山田章仁 | 181.0 | 90 | (2.0) | 4.0 |
15 | ゼーン・カルシュナー | 184 | 92 | 五郎丸歩 | 185.0 | 99 | (1.0) | (7.0) |
BK平均 | 183.3 | 93.7 | BK平均 | 177.4 | 88.9 | 5.9 | 4.9 | |
全体平均 | 188.8 | 105.6 | 全体平均 | 182.7 | 99.6 | 6.1 | 6.0 |
日本代表の中で,体重が相手の同じポジションの選手を上回っているのは,マレ・サウ選手と五郎丸選手だけだね。相手の方が圧倒的に大きい。
身長だと五郎丸選手と山田選手だけが相手より上だね。
そうだね。そして,フォワードを見ると平均体重で7キロ負けている。
ところで,2013年春の統計によると,日本人の中3男子の平均体重は54キロ,高2の平均体重が61キロだ。
単純に体重で比較したら高2と中3ぐらいの差があるということだね。
そう考えるとますます凄い体格差だな。
3.強化環境も違う
太郎,今回のラグビーワールドカップでベスト4に入った国はどこだい。
ニュージーランド,オーストラリア,南アフリカ,アルゼンチンだね。
そうだね。その4か国が毎年繰り広げている国別対抗戦がザ・ラグビーチャンピオンシップだ。
1996年~2011年まではアルゼンチンを除く3か国で開催されていて,名称も「トライネーションズ」だった。
つまり,世界3強同士で毎年対抗戦を行ってきたわけね。
そうだ。国別対抗戦としてはこのザ・ラグビーチャンピオンシップが世界最高だ。
さらに,国別対抗戦とは別に,ニュージランド,南アフリカ,オーストラリアの3カ国に属するプロチームで構成されるスーパーラグビーというプロリーグもある。
世界最高のプロリーグもあるというわけだね。
南アフリカの選手たちは,世界最高の国別対抗戦とプロリーグがある環境でプレーしてるんだから,ますます強くなるじゃん。
そうだ。これに対して日本は,パシフィックネーションズカップという対抗戦には参加してるけど,参加国は全てティア2の国だ。
また,日本はアジア五カ国対抗という対抗戦にも参加しているが,これはパシフィックネーションズカップよりもレベルが低い。
日本代表は,ティア1の国とはめったに試合も組ませてもらえない。だから今回南アフリカと戦ったのも歴史上初めてだった。
更に,日本にもトップリーグというものがあるけど,これは完全なプロリーグというわけではない。
プロ契約をしている人もいるが,企業の社員として勤めながらプレーする人がほとんどだ。
あの五郎丸選手も所属するヤマハ発動機とはプロ契約を交わしているわけではない。
全然環境が違うんだね。南アフリカはみんなプロで,さらに強い者同士で切磋琢磨しあう環境にいるのにね。
そうだ。しかも南アフリカではラグビーがとても人気の高いメジャースポーツであるのに対して,日本ではマイナースポーツだ。
人気が高ければ優秀な選手が集まりやすいだろうから,その点もハンデだね。
4.ラグビーは番狂わせが起きない
こんなにハンデだらけだと,後は運に任せるしかない気がしてくるよ。
太郎,下の表を見てごらん。これは,日本の野球,サッカー,ラグビーの最高峰リーグにおける直近の優勝チームの一覧表だ。
競技 | 年 | リーグ名 | チーム名 | 試合数 | 勝 | 負 | 分 | 勝率 |
野球 | 2015 | 日本プロ野球 | ソフトバンク | 143 | 90 | 49 | 4 | 63% |
サッカー | 2015 | Jリーグ | サンフレッチェ広島 | 34 | 23 | 6 | 5 | 68% |
ラグビー | 2015-2016 | トップリーグ | パナソニック | 7 | 6 | 0 | 1 | 86% |
ソフトバンクって滅茶苦茶強かったイメージあるけど,それでも勝率が6割台なのね。
そうだ。ところで,ソフトバンクはリーグ戦も1位だったけど,過去にはリーグ戦3位のチームが日本シリーズを制覇したこともあっただろ。
それって番狂わせだね。
そうだね。次にサッカーを見てごらん。
野球ほど勝率は低くないけど,あんまり高くもないね。それにしても引き分けが多い。
サッカーはあまり点が入らないスポーツだから,引き分けがどうしても多くなる。
では次にラグビーを見てごらん。
勝率86%じゃん。他の二競技と全然違うね。 引き分けが一回あるだけで,負けは無いし。
そうだ。この数字は,実力のあるチームが実力どおり勝つのがラグビーだということを示すひとつの証拠だね。
そうだね。優勝チームが一番強いなら,そのチームは他のチームに負けないはずだからね。
何でこんな違いが出るのかな。
色々あるだろうけど,一つ挙げるとすれば,運の要素だろうね。
野球はその日のピッチャーや打線の調子に左右されやすい。
振ったバットにボールが当たるかどうかの世界だから運が左右するというのは理解しやすいね。
毎年甲子園見てても,優勝候補って言われているチームが大体途中で負けちゃうイメージがある。
そうだね。運が左右する要素が大きいのはサッカーもだろう。
ただでさえ得点機会が少ないのに,その少ない得点機会で「たまたま外す」が続いたら結局無得点だ。
たしかに。一方のチームが明らかに内容で勝ってるのに負けちゃうときもあるもんね。
ラグビーはそういう運に左右される要素が比較的少ない。
ボールを持って走るのは極めて確実性の高い手段だし,得点機会も多い。
「たまたまトライ」とか「たまたまトライしそこなった」というのがあんまりないということだね。
そうだ。しかも,ラグビーは番狂わせが少ない上に,強さの序列が固定化されるという特徴があるかもしれない。
例えば,今回ワールドカップ4位だったアルゼンチンは,過去3位になったこともあるけど,南アフリカには一度しか勝ったことないからね。
アルゼンチンですらそうなの?凄いな南アフリカって。
日本代表がやったことの凄さが分かってきたよ。
じゃあ次は日本代表が具体的にどのような工夫をしたのか見てみよう。
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