では次にスクラムを見てみよう。
スクラムとは,軽い反則の後に,両チームのフォワード各8名全員が組み合って試合を再開するものだ。
軽い反則というのは,ボールを前に落とすノックオン,ボールを前にパスするスローフォワードなどだ。
このNTTコミュニケーションズシャイニングアークスの解説動画を見るとよく分かる。
上から見るとこんな風になっている。
※上記動画から引用
スクラムハーフというポジションの人がボールを下から転がしてスクラムの中に入れる。
それをスクラム最前列中央にいるフッカーが足で後ろに蹴り出す。この足でボールを蹴り出すことをフッキングという。
これで押し合うの?
そうだ。スクラム戦で劣勢になると著しく不利になる。
例えば下記の動画を見てごらん。これは2012年に日本代表がルーマニア代表と戦った時の動画だ。
滅茶苦茶押されているね。ボール奪われてるし。
そう。スクラムで力の差があると,こういう状態になる。
まず,押し込まれてボールを奪われることがある。そうすると,せっかく相手のミスでチャンスを得たのにそれが台無しだ。
また,弱い方のチームはスクラムを崩してしまう等の反則を犯しがちになる。
そうすると,ペナルティを課される。相手はペナルティを取った地点からペナルティゴールを狙うことができる。
または,タッチラインの外にボールをけり出して,そこからラインアウトでゲームを再開することも可能だ。
また,スクラムをそのまま押し込んでいけば大きく陣地を確保できる。最終的にトライまでもっていってしまうことも可能だ。
スクラムを組んだままトライしてしまうのをスクラムトライをいう。
スクラムトライはフォワード戦での超大技と言っていい。
スクラムが弱いチームは,スクラムの度にピンチになるね。
そうだ。スクラムからボールを出せたとしても,押された状態でパスすることになるから,パスが乱れがちになる。
スクラムの安定が,ラグビーにとって不可欠ということだね。
そうだ。ところで南アフリカと日本のフォワード総体重差は何キロだったかな。
1人平均7キロ差だったから,8人の総体重でいうと56キロ差だね。
この差って大きんじゃないの?
そうだ。体重差だけでスクラムの優劣が決まる訳では無いが,体重差がハンデであることは間違い無い。
スクラム強化は日本代表の課題だった。日本代表は体重が軽いから,今まで強豪と対戦した時にスクラム戦で劣勢に立たされることがほとんどだった。
そこで,日本代表は元フランス代表のダルマゾをコーチに招き入れ,スクラム強化に乗り出した。
筋力強化に加え,相手より低く,強固な結束のスクラムを組む練習を重ねていった。
その結果,スクラムが安定し,海外の強豪チーム相手にも押し負けないようになった。
ただ,それでも世界最強フォワードを擁する南アフリカ相手では劣勢に立たされる。
そこで,マイボールスクラムの際には,スクラムハーフが投入したボールを素早く出している。動画を見てごらん。
※↓該当シーンから再生開始します。
確かに,ボールを投入した後にすぐ出しているね。これだけ早ければ少々押されても大丈夫だね。
そうだ。これだけ素早くボールを出せるのは組み方に秘密がある。上記動画から切り出したこの場面を見てごらん。
最初,ナンバーエイトのマフィは左右のロックの間に頭を入れている。これが普通の組み方だ。
ところが,組んだ瞬間,フランカーとロックの間に移動して頭を入れている。わずかに手前に移動したのが分かるだろう。
ほんとだ。何でかな。
この方がフッカーの蹴り出したボールにより早く触ることができるからだろうね。ほんのわずかな差だが,これが大きい。
確かに,ボールが転がる距離が短くなるから,すぐボールに触っているね。
そうだ。そして,普通はナンバーエイトが足元でしばらくキープした後に,スクラムハーフ(9番)がボールをスタンドオフにパスする。
しかし,日本代表の場合,そのままナンバーエイトがパスをしている。
だからこんなに早くボールが出せるんだな。凄い工夫だね。
うん。ところで,最初は南アフリカに少々押されていた日本代表だけと,試合終盤のこのシーンでは逆に南アフリカを押し込むことに成功している。
※↓該当シーンから再生開始します。
ホントだ。凄いね。相手の方が重いのに。
そうだ。スクラムが体重差だけではないことがここから分かるだろう。
試合終盤だから相手が体力を消耗していたことも影響しているだろうね。
そして,この時スクラムを押し込んだことが,試合最終局面でスクラムトライを狙う場面につながっている。
では次にラインアウトを見てみよう。
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