モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

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今度は高橋洋一氏にツッコミを入れてみる#ソノタノミクス

今度は高橋洋一氏にツッコミを入れてみよう。

 

私がJBPRESSに書いたこの記事について,今度は高橋洋一氏が「デマだ」と言ってきた。

jbpress.ismedia.jp

 

高橋氏の記事はこちら。

www.zakzak.co.jp

 

このGDP改ざん疑惑について,まさにお手本のような間違いをしてくれているので,さらす。

 そして、「GDPはかさ上げされている」というのはデマのたぐいだ。日本のGDP統計は、5年ごとに基準改定されている。2016年にも基準改定が行われたが、その際、09年に国連で採択された国際基準も取り込んでいる。改訂された場合、過去の値も遡及(そきゅう)適用されるので、改訂自体で統計数字が混乱するわけではない。もしこの手順が改竄(かいざん)というのなら、政府の統計委員会などに膨大な議事録が公表されているので、ぜひ指摘したらいい。

 それまでGDPに計上されていなかった研究開発費について、改訂後は「知的財産生産物」という固定資本として扱われ、その増分は設備投資になる。そこで「かさ上げ」という批判が一時出たが、過去データも遡及すればいいだけだ。

 

 

上記でいう「国際基準」とは,GDP算定の国際基準である2008SNAのことである。研究開発費のことについて触れているが,これは2008SNAによって新たにGDPに加えられるものである。

この高橋氏の文章を読んだ人は「国際基準に合わせた結果かさ上げされただけであって,何も問題ない」と解釈するであろう。

もう,ものの見事に内閣府の術中にはまっている。高橋氏は,私が繰り返し指摘している,2008SNAと全く関係ない「その他」の部分について一切言及していない。

高橋氏の場合,わざとやっている可能性があるが,そうだとすれば悪質である。

わざとではなく,本気でやっているなら,専門家として恥ずかしくないのかなと思ってしまう。

 

このGDP改ざん疑惑の最も重要な部分は「2008SNA対応部分」ではない。それとはまったく関係ない「その他」でアベノミクス以降が異常にかさ上げされており,アベノミクス以前は逆にかさ「下げ」されているのが問題なのである。

アベノミクス擁護派はひたすら「国際基準に合わせただけ」と強調し,私の主張を「デマ」と断定する。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も繰り返し言っているのだが,私が問題にしているのはその国際基準と全然関係ない「その他」の部分である。

 

擁護派の諸君がひたすら間違えるので,この現象に新しい名前をつける。

ソノタノミクス。

どうだ。これなら間違えないだろう。従前「カサアゲノミクス」と名付けていたが,これだと「かさ上げは国際基準に合わせただけ」といちいち同じ間違いをされてしまう。しかし,「ソノタノミクス」なら間違えないだろう。きっと。

 

同じグラフを何度も使っているがまた使う。

これが改定前の名目GDP。

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2015年度のGDPは1997年度より20兆円以上低い点がポイント。

この形をよく覚えておいてほしいのだが,90年代はおしなべて2015年度よりも高い。2015年度より下なのは1994年度しかない。

なお,2015年度までしかないのは,旧基準の数字がそこまでしかないから。

そしてこれが改定後。

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改定後はなんとびっくりほとんど1997年度と2015年度の差が無くなっている。わずか0.9兆円。そして,1997年度以外の年度は,全て2015年度より低くなっている。まさに歴史が変わってしまった。

 

旧基準との差額を抜き出すと下記のとおり。

 

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アベノミクス以降(2013年度以降)だけビヨーン。

そして,アベノミクス擁護派が強調している「2008SNA」対応部分のかさ上げ額がこちら。

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まあこれもアベノミクス以降がビヨーンとなっていて怪しい。しかし,2008SNAと無関係の「その他」は比較にならない。ご覧いただきたい。

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このグラフだけ棒グラフにしているのは,かさ「下げ」もされていることを視覚的に分かりやすくするためである。

アベノミクス以降のみ,突出してかさ上げされている。平均して5.6兆円。

他方,それ以前は,棒が下向きに出ていることからも分かるとおり,かさ「下げ」されているのである。
特に1997年度と2015年度に注目してほしい。1997年度は5兆円もかさ「下げ」されている。他方,2015年度は7.5兆円もかさ「上げ」されているのである。

すなわち,この「その他」の項目だけで12.5兆円も差が縮んだことになるのだ。

「その他」の影響力がどれだけ大きいか,改定後の数値から「その他」を引いたグラフを見てみよう。

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全然違う。これだと1997年度と2015年度は13.4兆円も差がある。

 

「その他」があったからこそ,2015年度が1997年度にほぼ追い付く,という現象が起きたのである。

そして,2016年度は史上最高の名目GDPを記録している。

この問題についてより深く分析したのが下記の記事。

blog.monoshirin.com


特に家計最終消費支出が怪しいことになっているのがミソである。

 

当ブログの読者は,また同じようなことを書いていると思われるかもしれない。

同じような間違いをして私の主張を「デマ」と断定する輩が次から次へとわいてくるから仕方がない。

須賀原洋行氏,不破雷蔵氏,高橋洋一氏・・・ことごとく「GDP改定は2008SNA対応によるもの」という認識で止まっており,「その他」問題に目を向けていない。

 

内閣府がいかに巧妙な仕掛けを施したかがこれで分かるだろう。

これで騙される人を地道に減らしていくために,私は何度でも同じことを書こうと思う。特に,社会的影響力が大きいと思われる人物が間違った場合についてはいちいちツッコミをいれていこうと思う次第である。

 

もう一度書くが,この「その他」によってアベノミクス以降だけが大きくかさ上げされる一方,特に90年代が大きくかさ「下げ」されている現象を

ソノタノミクス

と名付ける。

 

流行らせよう。#ソノタノミクス

 

アベノミクスの失敗全般について知りたい方は拙著をどうぞ。