【わかりやすくまとめると・・・】
・蒸気機関は,金属の筒の中で,蒸気の力を使ってピストンを上下させる装置。
・最初は蒸気が冷えて縮む際の力を利用していたが,後に膨らむ際の力を利用するようになった。
・ピストンの上下運動を,部品をうまく組み合わせて回転運動に変えている。
蒸気機関というのは,原動機の一種だ。
原動機というのは,自然エネルギーを機械力に換える装置のことだよ。
馴染みやすい名前でいうと,エンジンということかな。
そういうことだ。ここでは,蒸気機関のうち,レシプロエンジンと呼ばれるものについて説明しよう。
レシプロエンジンは,非常に単純に言うと,筒の中でピストンを上下させる装置だ。
ピストンを上下させる力として,蒸気が使われている。
太郎,水が蒸発する際に,体積が一気に増えるのは分かるかな。
熱で分子の動きが激しくなり,分子が飛び回って広がるから,体積が増えるんだよね。
そうだ。それを一気に冷やすとどうなる?
体積が一気に戻るね。蒸気で生じた圧力も一気に下がるだろうな。
そうだ。最初の蒸気機関は,生じた蒸気が元に戻った時に生じる気圧差を利用していた。
まずピストンの入った筒の中に蒸気を入れる。
なお,ピストンはシーソーみたいな装置につながっている。
そしてそのシーソーの片方に重りがついているから,ピストンは普段筒の上部に上がった状態だ。
話を戻そう。蒸気の入った筒を冷却水で急激に冷やす。
そうすると,圧力が一気に下がって,ピストンが引っ張られて下に下がる。
それに引っ張られて,シーソーの片方が上昇する,というわけだ。
これを,鉱山で石炭を掘る際に発生する地下水の排水に利用したんだよ。
↑ニューコメンの蒸気機関
なるほど。膨らんだものが縮む際の力を利用したわけだな。
そういうことだ。そして,次に,膨らむ際の勢いを利用した蒸気機関が発明された。
技術が発達して,膨らむ際の勢いでもピストンを動かせるようになったんだ。
膨らませた蒸気は,水で冷やしてまた元に戻す。これを繰り返してピストンを動かすことになる。
さらに,ピストンの両サイドに交互に蒸気を吹き出す複動式蒸気機関が発明された。
機関車って,それで動いているのかな。
そのとおり。ちなみに,蒸気機関のように,筒の外側で燃料を燃やすタイプのエンジンを外燃機関というんだ。
ということは,筒の内側で燃料を燃やすタイプのエンジンがあるということだね。
そう。現在主に自動車に使用されているガソリンエンジンは,筒の内側で燃料を燃やしている内燃機関だ。
筒の内側で,燃料と空気を混ぜた気体に着火して爆発させて,その勢いでピストンを動かしている。
ピストンが上下するのは同じなんだな。
ところで,ピストンの上下運動がどうして車輪の回転運動になるんだい?
部品をうまく組み合わせて,上下運動を回転運動に変えているんだよ。
太郎,自転車を漕いでいるときを想像してごらん。
自転車を漕ぐ動きというのは,よくよく考えてみると,足を上下に動かしているだけのように思えないかい?
言われてみれば,そんな気がするね。
だが,ペダルがついているから,上下の運動が回転運動に変わるわけだよね。
エンジンの中もそれに近いような仕組みがあるということだよ。
そうか。ペダルみたいな役割をする部品がついているから,回転運動にかわるわけだな。
作者:UtzOnBike
そうだ。ところで,エンジンの力の大きさを表す単位として,馬力が用いられているよね
これは最初の蒸気機関の用いられ方に由来しているんだよ。
炭鉱で石炭をほるために掘り進んでいくと,どうしても地下水が湧き出てきてしまう。
この水を排出するために,最初はたくさんの馬を使用していたんだ。
そこへ,蒸気機関が登場し,馬の代わりに排水をするようになった。
そして,蒸気機関を売り込む際に,「馬何頭分の働きをしますよ」と言えば分かり易い。
そこで,蒸気機関の力の単位として「馬力」という表現が使われるようになったんだ。
このように機械力を利用することによって,大量生産が可能になった。
そして,大量生産に大きく関係するのが,産業革命だ。次は産業革命について話すことにしよう。