【分かりやすくまとめると・・・】
・綿布の需要が高まったことにより,大量生産をする必要が生まれた。
・蒸気機関が綿布の大量生産を可能にした。蒸気機関は,蒸気機関車や蒸気船でも使用され,大量生産された綿布が速く・遠く流通して莫大な利益が生まれた。
・大量生産を支える大量の労働者は,農業革命の影響で生まれた。
産業革命のきっかけは,綿布の需要が高くなり,それを大量に生産する必要が生まれたことだ。
綿布って,僕が今来ているこの服も綿布でできているのかな。
どれどれ見せてごらん。そうだね。これは綿布でできているね。
太郎の服のように,綿布は今でも衣服などに活用されている。
元々,イギリスがインドから綿布の原料である綿を大量に輸入したことから,綿布が流行したんだ。
綿布は手触りがよくて使いやすいからね。
綿布は二つの工程を経て作られる。
まず,原材料から糸を作り出す過程だ。これは,綿の繊維を撚って作られる。
撚るってどういう作業なの?
繊維を捻じり合わせて一本の糸にする作業だよ。
綿の実はもじゃもじゃした繊維に包まれているんだけど,この繊維を捻じり合わせて一本の糸にしているんだ。
この過程を紡績と言い,紡績によってできた糸を紡績糸と言っている。
次に,糸を縦と横に重ねて織っていく。これで綿布が出来上がる。
綿布って,結局植物の繊維で出来てるわけだよね。紙と似ているね。
鋭い指摘だね。そのとおり。どちらも植物繊維であるセルロースから出来ている点では全く同じだ。
ただ,綿布は繊維を引っ張って捻じり合わせた糸で作られているから,紙より頑丈になるわけだ。
紙は単に繊維が絡まりあって出来ているだけだもんね。
そうだ。話を戻そう。綿布の人気が出ると,綿布を大量に生産する必要が出てくる。
そこで,紡績と織りを効率よく行うため,いろんな機械が発明された。
その機械の活躍で,綿布が大量に生産されるようになったんだ。
機械は最初何で動かしていたの?
最初は人力さ。そして水力を使う紡績機が発明された。
もしかして,その次に蒸気機関が使われたのかな。
そのとおり。蒸気機関を使うことによって,更に大量の綿布が生産できるようになった。
↓1835年頃の綿紡績工場
水力は川の近くに無ければ使えないけど,蒸気機関なら場所を選ばないね。
そのとおりだ。だから,町の中心部にもたくさん工場ができた。
蒸気機関は原材料を運ぶのにも,できた製品を運ぶのにも活躍した。
蒸気機関は陸では機関車や自動車に使用され,水上では船に使用された。
たくさんできた綿布を色々なところに運べるわけだね。
そうだ。このように,綿布の生産過程の機械化の影響が他の分野にもどんどん及んでいった。
例えば,機械を作るための鉄が大量に必要になるし,その鉄を精錬するための石炭が大量に必要になる。
できたものを運ぶ鉄道や船にも大量の鉄が必要になるね。
そう。そして,大量にできたものを売りつける先も必要になる。
産業革命が最初に発生したイギリスは,世界中に植民地を持っていた。
だから,生産したものを売るための大きな市場があった。
工場を持っている人は大もうけだね。
そのとおり。産業革命は,工場を持っているお金持ちの人,つまり資本家と,その工場で働く労働者,という二つの階級を生み出した。
そして資本主義が発展していったんだ。
資本主義というのは,資本家が,労働者を使って商品などを作り,たくさんのお金を生み出していく仕組みのことだ。
ここで資本家と言うのは,工場などの生産手段を所有している人達のことをいう。
工場で働く労働者もたくさん必要になると思うけど,その人たちはどこから来たの。
農村さ。産業革命と同じくらいの時期に,農業の分野でも革命的な変化があった。
一つは農法の変化だ。ノーフォーク農法という方法が発明された。
これは大麦→クローバー→小麦→かぶの順に四年周期で作物を栽培する方法だ。
これによって休耕田が無くなり,それまでよりもたくさんの穀物を作ることが可能になった。
穀物が増えるということは,よりたくさんの人口を養えるということだね。
そう。そしてもう一つは囲い込みさ。これは細かく分かれていた土地をまとめて特定の地主の所有にしてしまうことさ。
土地を集約して生産できるから,効率がよくなって穀物の量も増える。
そして,土地を奪われた農民は,地主にやとわれて農業を続ける者もいたけど,職を求めて都会に出る人もいた。
そういう人達が,産業革命を支える工場労働者となったわけだね。
そうだ。農業革命が産業革命を裏から支えたとも言える。
そしてそれは人口の増大ももたらしたんだ。
では次に,民主主義について話をしよう。これも産業革命に関係するからね。