【分かりやすくまとめると・・・】
・万能細胞とは,どんな細胞にもなれる細胞のこと。万能細胞は,分裂を繰り返していくうちに,万能性を失ってしまう。
・ES細胞は受精卵から得た万能細胞。iPS細胞は特定の遺伝子を混ぜることで細胞を初期の状態に戻し,万能化させたもの。
・iPS細胞は自分自身の細胞から作れるので,免疫系に攻撃されない等の利点がある。
人の体は受精卵が細胞分裂を繰り返して出来上がったものだ。
内臓や,皮膚,血管など,体を構成する細胞がたくさんあるが,元をたどれば一つの受精卵だ。
例えば血管の細胞を心臓の細胞に変化させることはできないの。
それはできない。細胞分裂を繰り返していったん特定の細胞になってしまうと,もう別の細胞にはなれないだ。
それって,細胞分裂を繰り返すと,細胞ごとに遺伝子が異なってくるということなの?
それは違うよ。全ての細胞は同じ遺伝子を持っている。
ただ,遺伝子の発現を抑えているだけなんだ。
例えば,心臓の細胞であれば,心臓の遺伝子以外は発現しないようになっている。
分裂を繰り返すうちに,特定の遺伝子だけが発現されていくようにプログラムされているということだね。
分裂するほど,遺伝子に鍵がかけられていくみたいなものだな。
逆に,最初の細胞は,そういうプログラムが働いていないから,どんな細胞にもなれるということだよね。
そのとおり。それが万能細胞だ。
例えば,受精卵の細胞から作られたES細胞というものがある。
これはどんな細胞にもなれる万能細胞だが,問題がある。
受精卵から細胞を取るという点が問題なのかな。
そのとおりだ。受精卵なのだから,そのまま成長させれば人として生まれているだろう。
そういった性質の細胞を使用してよいのか,という倫理的な問題がある。
さらに,ES細胞はあくまで他人の細胞でしかない。
そうすると,免疫系に攻撃されてしまうという難点があるね。
そのとおりだ。このES細胞の問題点を解決したのがiPS細胞だ。
これは,細胞に特定の遺伝子を入れることで,細胞を万能化させたものだ。
細胞のプログラムを初期化して,何にでもなれる状態に戻したということだね。
そのとおりだ。膨大な実験を繰り返して,細胞を初期化する遺伝子が発見されたんだ。
このiPS細胞は自分の細胞から作り出すものだ。
例えば自分の皮膚の細胞を初期化して万能細胞にすることが行われる。
だからES細胞のように倫理的な問題もないし,免疫系に攻撃される心配も無い。
このiPS細胞によって,将来的には臓器等の体の組織を再生できるようになる可能性がある。
例えば,脊髄をを損傷して下半身不随になった人が,神経を再生させ,再び歩くことができるようになるかもしれない。
それ以外に,病気の研究にも非常に役立つ。
患者の細胞を培養し,それを正常な細胞と比較することで,病気の原因を突き止めやすくなる。
すごいね。何でもできてしまうね。
そうだね。iPS細胞は理論的には何にでもなれる細胞だ。だが,問題点が無いわけではない。
例えば,細胞の癌化の問題がある。
iPS細胞のような万能細胞の特徴として,どのような細胞にでもなれることと,無限に増殖する点がある。
無限に増殖する,というのはがん細胞と一緒だね。
そのとおりだ。うまくコントロールしないと細胞ががん化してしまうという問題点が残っている。
そのような問題点を解決できれば,今まで治療を諦めざるを得なかった難病も治せる様になるかもしれない。
じゃあ,次は生物の歴史の話に戻って,人が誕生するまでの話をしよう。
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