これが自民党憲法改憲草案に記載されている国家緊急権規定(緊急事態条項)の要件・効果のまとめだ。
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■1.緊急事態宣言の発令要件
①我が国に対する外部からの武力攻撃,内乱等による社会秩序の混乱,地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態であること。
②特に必要があると認められること。
③閣議にかけること。
④事前又は事後に国会の承認を得ること。
■2.緊急事態宣言の発令効果
法律の定めるところにより,以下の効果が発生する。
①「内閣は」法律と同一の効力を有する政令を制定できる(事後に国会の承認を得ることが必要)。
②「内閣総理大臣は」財政上必要な支出その他の処分を行うことができる(事後に国会の承認を得ることが必要)。
③「内閣総理大臣は」地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
④何人も,当該宣言に係る事態において国民の生命,身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
※この場合でも,憲法14条(法の下の平等など),18条(奴隷的拘束及び苦役からの自由),19条(思想及び良心の自由),21条(表現の自由)その他の基本的人権は最大限に尊重されなければならない。
⑤緊急事態宣言が効力を有する期間,衆議院は解散されないし,両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。
■3.緊急事態宣言の終了
以下の場合に緊急事態宣言の効果は終了する。
①緊急宣言について不承認の議決があったとき。
②国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき。
③事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるとき。
④国会の承認を得ずに100日が経過したとき(※100日ごとに国会の承認を得続けることができればずっと延長可能)
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これ,緊急事態宣言の効果が及ぶ場所に対する言及が無いね。いつも日本全国に効果が及ぶのかな。
そこらへんはきっと法律で決めるんじゃないかな。
ふ~ん。ところで,なんで国家緊急権規定が必要って言われ出したのかな。
なんでだろうね。東日本大震災で国がうまく対応できなかったことを理由に挙げる人はいるけどね。
緊急事態に対応するための法律が無かったの?
そういうわけでもない。災害対策基本法や災害救助法という法律があった。
災害対策基本法に緊急政令の規定があるということは自民党の解説にもあったね。
そうだ。ただ,あの震災に際にはそういった法律が使われなかった。
なんでだろうね。
そこが問題だね。法律に何らかの欠陥があって使えなかったのか,それとも単に使い方を知らなかったのか。
そうだね。理由が法律の欠陥であれば,憲法で国家緊急権を定める必要性があるというのは一理ある。
逆に,単に法律の使い方を知らなかっただけならば,国家緊急権の必要性は薄れるね。
そうだね。まずは現行法では非常事態に対応できないのか,という点を真剣に議論する必要があるね。
まあそうだねえ。国家緊急権はヒトラーが濫用した事例もあるし,危険性があるのは否定できないからねえ。
そうだね。危険性があることを承知した上でそれでも定める必要があるのか,を考えないといけないね。
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