【分かりやすくまとめると・・・】
・最初の印刷は木版印刷。1ページごとに丸ごと字を彫るので手間がかかる。
・活版印刷は予め一文字ずつ字を用意しておく,それを組み合わせるもの。使う文字がすくないほど効率が良いので,表音文字(アルファベット)が向いている。他方,表意文字(漢字)は字が多すぎて逆に効率が悪くなるため,活版印刷に向いていない。
・活版印刷によって,本の大量生産が可能になり,本が安価になって広く一般に普及した。それによって,人々の知識レベルが飛躍的に向上した。
印刷機械が無かった時代,人々は,本を全て手で書き写していた。
そりゃ大変だね。時間も労力もかかるね。
そのとおり。本を書き写す専門の職人がいたけど,移すのに時間がかかりすぎるから,本の数自体が少なかった。
そうすると,本が貴重な存在になるから,本の値段が高かったわけだね。
そのとおりだ。本は一部の上層階級のものだった。
そこに最初に登場したのが木版印刷だ。
これは木の板に文字や絵を彫って,そこに墨を塗り,その上から紙をのせてこすって印刷するものだ。
例えば,日本の浮世絵はこの木版画の一種だ。
一度木版を完成させてしまえば,何枚も印刷できるから,手で書き写すよりもはるかに大量の文書を作ることができた。
でも,全部1から彫っていくのは大変そうだね。
そこで考え出されたのが活字を利用した活版印刷だ。
これは文字の一つ一つが別の板に分かれている。そして,その文字を組み合わせて活版をつくり,印刷するんだ。
↑活版印刷に使われる活字。出典:活版印刷 - Wikipedia
作者:katorisi
1から彫っていくよりは楽そうだけど,全ての文字をあらかじめ揃えておかなきゃいけないから大変そうだね。
そのとおり。木版印刷も活版印刷も中国で生まれたけど,中国では活版印刷はあまり流行しなかった。
それ,漢字の種類が多すぎるからだね。結局活字をたくさんつくらなきゃいけなくなるから,かえって木版の方が効率よくなるね。
そのとおり。これは日本でも同様で,日本でも木版印刷が主流だった。
じゃあアルファベットが起源の言語はどうかな。活版印刷の方が楽なんじゃないの?
そうだ。アルファベットは26文字しかない。極めて活版印刷に向いている言語なんだ。
ヨーロッパにおいては,ドイツで15世紀の半ばに活版印刷の技術が開発され,瞬く間にヨーロッパ中にそれが広まった。
15世紀の半ばまではヨーロッパの書籍数は10万冊足らずしかなかったと言われている。
それが活版印刷が普及したとたん,15世紀末時点でのヨーロッパの書籍数は900万冊に達したんだ。
凄いね。一気に90倍じゃないか。
この書籍数の増加が,知識の共有化と一般化につながった。
ヨーロッパで学問が発展したのは,その影響がきっと大きいね。
そうだね。本がたくさん普及すれば,たくさんの人がいろんなことを学べるからね。
印刷手法は他にも色々ある。例えば,平板印刷というものがある。
これは,活版印刷のように,凸凹を利用した印刷ではない。油が水をはじく性質を利用したものだ。
太郎,石の板に,油をはじかないが,水ははじく物質で文字や絵を書いたと想像してごらん。
そして,その板に水を塗ったとしよう。
その上から,油でできたインクを塗るとどうなるかな?
文字や絵を書いた部分だけインクが残るね。他の部分は水にはじかれるからインクがつかない。
その上から紙をのせてこすれば印刷物の出来上がりだね。
↑石版印刷で作成された印刷物。出典:リトグラフ - Wikipedia
そのとおり。現在の印刷の主流はこの平版印刷の一種であるオフセット印刷だ。
これは,ゴムでできた物質にいったん平板のインクを写し,そのゴムから印刷紙にインクを写すというものだ。
作者:Sven Teschke, Büdingen
版から直接紙に印刷しないというわけだな。
そのとおり。他にも色々印刷の種類があり,日々進化を遂げている。
版の元になるデータは今コンピュータで作られている。それを機械で版に出力している。
このようにコンピュータを使用して印刷物を作成することをDTP,デスクトップパブリッシングと呼んでいる。
机の上のコンピューターで面倒な作業が済んじゃうんだね。
昔と比べれば比較にならないくらい早いスピードで印刷物が出来上がっていくわけだね。
そうだ。そして,インターネットが普及したこともあって,情報は必ずしも印刷されている必要が無くなった。
なんか,僕らが生きている時代って,凄いんだな。
そうだね。農耕・牧畜の話から発展して印刷にまで話が及んだが,次は暦の話をしよう。
暦も農耕・牧畜と深く関係するからね。
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