巨人の選手が,試合前で円陣を組み,声出しをした選手に対し,試合に勝った場合は選手みんなで出したお金を渡していたという。上記の記事によれば,1人あたり5000円。
逆に,負けた場合は,声出しをした選手が選手みんなにお金を配っていたそうな。これも上記記事によれば1人あたり1000円。
この金額について,下記の記事によれば,勝利が続くと上がっていったそうな。
NPB調査委員会は上記の事実を以前から把握していたものの,少額だから問題ないと判断したという。
しかし,選手たちのやったことは常習賭博罪(刑法186条1項)に該当するのではないかと思う。
常習賭博罪とは,読んで字のごとく賭博を常習としてやるものである。
そして,賭博というのは,偶然の事情に関して財物を賭け,勝敗を争うことを意味する。
巨人軍の選手は試合の勝敗という偶然の事情に関して金銭という財物を賭け,勝敗を争っていたのだから,ばっちり賭博に該当するだろう。
ただ,賭博は「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は成立しない(刑法185条但書)。例えば,缶ジュースとか牛丼を賭ける場合がこれに当たる。
今回報道で明らかになっている金銭は1人あたりにすると1万円にも満たないものであるから,プロ野球選手にしては少額だと感じる人もいるだろう。そうすると,少額の金銭だから「一時の娯楽に供するもの」として,賭博に該当しないと思うかもしれない。
しかし,金銭は一時の娯楽に供するものに該当しないとするのが判例の主流である(大審院大正13年2月9日判決,最高裁昭和23年10月7日判決)。
したがって,従来の判例に従えば,巨人の選手がやっていたことが「賭博」に該当することは間違いないと言っていいだろう。しかも,それを繰り返しやっていたというのであるから,常習賭博罪に該当すると思う。
常習賭博罪の法定刑は3年以下の懲役である(刑法186条1項)。
「少額だからよい」という問題では無い。まぎれもない犯罪である。
問題は,これをNPBも巨人も隠したということだ。
選手たちがやっていた行為の犯罪性について,当然,NPBや巨人は顧問弁護士に問い合わせたと思う。
そして,おそらく常習賭博罪に該当するとの指摘を受けたのではないか。これを常習賭博罪に該当しないと判断する弁護士はいないと思う。
選手たちも悪いが,知っていて隠したNPBと巨人の罪も重い。
後からこうやってばれたせいで,巨人に対するイメージは余計に悪くなってしまった。いや,巨人だけではなく,プロ野球に対するイメージが悪くなったと言うべきかもしれない。
こういう報道をみると「悪いことは発覚した時点ですぐに公表する」というのが長い目で見たときに一番傷が浅くて済むのではないかと思う。